現実は理想と掛離れたオリエンタル急行 【11/24~11/25】


BudapestからIstanbulまでの移動手段については、相当頭を痛めた。
というのも、ぼくたち夫婦は想像以上にBudapestの街が気に入ってここでの滞在を楽しんでいた一方で、滞在を伸ばすことによりIstanbulへの移動は短時間で可能な飛行機を利用しないといけなくなるからだ。
簡単に下記のようなメリット・デメリットを洗い出してぼくたちは検討した。
飛行機で移動するメリット・デメリット
メリット:短時間で疲れない
デメリット:金銭的コストが大きい
鉄道で移動するメリット・デメリット
メリット:途中通過国(ルーマニア、ブルガリア)の風景が楽しめる
     なかなか体験できないオリエンタル急行の旅が楽しめる
デメリット:時間がかかり疲れる
列車で移動する場合は24日の夕方発の列車に乗り26日の早朝にIstanbulに到着。
飛行機で移動する場合は25日の午前中の便に乗り、同日の午後にはIstanbul到着。
飛行機で移動しても結果的にBudapestで楽しめる時間に大差がないこととなかなか体験できないオリエンタル急行の旅を楽しもうということで、Istanbulへは列車で移動することに決めた。
Budapestを11/24の19:15に出発する列車(列車の名は”Balkan Express”)に乗り込んだ。
6 人がけのコンパートメントにぼくたち2人だけで、検札に来た車掌にIstanbulまでぼくたちだけなのかを問うたところそのようだったためひとまず安心した。
狭い6人向けのコンパートメントに見知らぬ人と一緒に2日過ごすというのはそれなりに疲れるし、荷物の安全などいろいろな点で不安だったからだ。
検札でイマイチ理解に苦しんだことがある。
それは車掌がぼくたちの切符をIstanbulに到着するまで預かると言ったこと。
預かる理由がイマイチわからないし、最大の問題に車掌が車掌らしくて「にせ車掌なのか?」と疑ってしまいたくなるような雰囲気を出していたのがさらにぼくたちの不安を増大させた。
列車は定刻通りにBudapestを発ち、次第に暗くなっていく闇夜をRomaniaとの国境目指して突き進む。
Budapest駅で発車に備えるBalkan Express
budapest station
ぼくたちが約2日過ごしたコンパートメント
compartment
オリエンタルエキスプレスのタイムテーブル
timetable
※Thomas Cookを参照して作成
Romaniaとの国境には列車が4時間ほど走ってから到着。
これまで通過してきたいくつかの国境と同じように、パスポート審査官が列車に乗り込んできてスタンプを押すのみ。
それ以上の手続きはない。
だいたいぼくたちはRomaniaで降りるわけでなくIstanbulまで列車に乗り続けるので、国境警備隊も特段厳しくぼくたちを審査するわけでもない。
列車はさらに走り続ける。
多くの人はヨーロッパを縦断するこの列車を豪華列車だとイメージしていることだろう。
かくいうぼくはシャーロックホームズやアガサ・クリスティーの小説に出てくるような列車をイメージしていた。
が、はっきりいってそんな豪華なものではない。
トイレは「ボットン」だし、ベッドだってフカフカではない。
6人がけのコンパートメントなので3段ベッドだ(コンパートメントにぼくたちだけだというのがここでも本当によかったと実感)。
それに2日近くも列車に乗るというのにシャワーがついていないどころか食堂車すらない。
車掌に食堂車はないのか?と訊いても「ない」と答えられたのでぼくたちはそうだと信じている。
ただ、もしかしたら食堂車はあったのかもしれない。
でも、車掌はあえて「ない」と答えたのではないかと一方で勘ぐったりもした。
なぜ、車掌はそんな嘘を言ったのか。
それは頻繁に切り離されたりくっついたりするBalkan Expressの車両に理由があるのかも。
この列車、駅に停まるたびに頻繁に車両を切り離したりくっつけたり、そして列車を牽引する汽車を取り替えたりととにかく忙しい。
この切り離し・連結作業がなかったら、もっと短時間でIstanbulまでたどり着けるのに。
頻繁な切り離し・連結のため、汽車はいろいろなデザインの車両をひっぱりさしずめ多国籍軍の隊長といった趣とも捉えられる。
途中の駅で売り子がやってくるかと思いきや、一向にそのような気配はない。
商売っ気がないといえばそれまでだけど、随分とおいしいビジネスチャンスを逃しているなぁと思ってしまった。
仕方がないのでぼくたちは大量に買い込んでおいた水、お菓子を頼りにIstanbulまで過ごすことにした。
翌日、Romaniaの首都Bucharestに到着。
時刻表によればこの駅に3時間も停車するらしい。
降りて食事でもできるか?と車掌に訊いてみても「ダメだ」と至ってシンプルな回答。
この駅で、Beogradへ向かう列車が切り離されて先に出発。
残されたぼくたちは発車時刻までホームで待っているのか?と思いきや、ぼくたちの車両だけ切り離されて車庫のような場所へ引っ張っていかれるでは。
これほどまでに車両が切り離されると車掌が「食堂車はない」と言った理由がわからなくもない。
Bucharestの駅で停まっているとさすがヨーロッパと思わされる車両を目にした。
「寝台車」という単語をいろいろな国の言葉で壁に書いている。
多国籍寝台車
sleeping car
“Schlafwagen”、”Sleeping car”など書かれている
車窓から見た範囲で言うなら、Bucharestのさびれ具合は他の東欧の国と比較しても飛びぬけていた。
旧ソ連が東欧諸国を牛耳っていた時代に建てられたであろう集合住宅が塗装のはげたまま建ち並び、Bucharestの人たちには街の景観をよくしようという余裕が一切感じられない。
チャウシェスクが支配していた時代を懐かしんでいるのだろうか。
Bucharest駅周辺
bucharest
列車はBucharestを後にし、Bulgariaとの国境を目指す。
RomaniaとBulgariaの国境に流れる川沿いは工業地帯として発展し、Bulgaria側には多くのトラックが長い列を作って国境審査に並んでいる様子が伺えた。
Bulgaria側の工業地帯を望む
border
Bulgaria側の入国審査を受けているとき、ようやく売り子に遭遇。
売り子は車内にいる外国人のぼくたちを見つけると駆けつけて「お腹は減っていないか?サンドウィッチはどうだ?」と売り込んでくる。
2つで5ユーロ。
高い!
でもどちらかというと売り手の立場のほうが強い。
ぼくたちは細かいユーロは持っていないという弱みもあった。
10ユーロ紙幣しか持っていないのだ。
おつりを貰おうにも相手は持っていないと言う(一応レジへ確認に行っていたが)。
仕方がないのでペットボトルのミネラルウォーターを買って10ユーロにしてもらった。
10ユーロという随分高い買い物をしてしまったものの、思いのほか売り子の感じがよかったので悪い気はしなかったというのが正直な気持ち。
どうせぼられるのなら気持ちがいいほうが良い。
ぼられて後味が悪いほど最悪のことはない。
サンドウィッチの味はというと、意外にもおいしい。
さすがBulgaria、サンドウィッチのソースにヨーグルトをふんだんに使っている。
スパイスも多く使われていて、ヨーロッパというよりもトルコの味に似ていていよいよトルコに近づいているんだなと実感。
2つで5ユーロもしたサンドウィッチ
sandwitch
食事をして満足したぼくたちを乗せた列車はTurkeyとの国境を目指して走る。
ダイヤ通りに走っていた列車だけれどもBulgariaに入ってからそのダイヤは次第に乱れ始めた。
そしてTurkeyへの入国審査を受ける駅Kapikuleに到着したとき、時計は既に夜中の3時をゆうに過ぎていた。
Kapikuleでの審査はこれまで行われてきた車内審査ではなく、乗客は全員駅で降りて国境警備所へ向かうというもの。
夜中に入国審査を受けるものだから乗客たちは随分迷惑そうな様子。
ぼくたちと同じような旅行者も入国審査の列に並んでいた。
ここで、ぼくたちは日本のパスポートの恩恵をまたもや受けることに。
どうも大半の欧米人はTurkeyへの入国に際してVisaが必要らしい。
なので、入国審査を受ける前に彼らは国境警備所の裏でVisaを申請するようにと言われていた。
入国審査の列ではぼくたちよりも前に並んでいた欧米人たちはVisaの申請をしないといけなかったため結果的にぼくたちよりも後にすべての審査を終えていた。
そして、Visaの申請が不要なぼくたち日本人は羨望のまなざしを受けていた。
TurkeyはEUへの加盟を希望しているのにEUの人にVisa申請を要求しているのは不利なのでは?とぼくたち夫婦は思ったのだけれどもどうなのだろう。
ちなみに、アメリカ人のVisa申請費が最も高かったのは皮肉だ。
世界の平和を維持している(自称?)というのに、Visa申請費が高いとはまるで歓迎されていないようだ。
実は彼ら、多くの国で高額のVisa申請費を請求されている。
乗客全員の入国審査は終わったはずなのに列車は一向に発車する様子を見せない。
ダイヤでは夜中の2時20分に発車するはずなのに、実際に列車は発車したのは夜が完全に明けた8時過ぎ。
列車はIstanbul目指してダイヤの乱れを取り返そうとするわけでもなくひた走る。
車窓から見る風景にぼくたちは驚いた。
Bucharestは目でないほど洗練されている。
寒々しさがないからかもしれないが、とにかく明るく線路脇に立つ住宅もきれいに塗装されている。
そして、町全体がカラフルだ。
Istanbulという街への期待を抱き、ぼくたちはダイヤよりも5時間以上遅れて到着したIstanbul駅を降り、宿を目指した。
バラバラな車両の色
train3
知らない間にたくさんの車両が連結されていた。
BudapestからIstanbulまで
運賃:34040Forint(2等)
   ※Euroとの為替相場によって変動する可能性あり
距離:1,669km
時間(予定):約37時間
時間(実質):約42時間
経験;Priceless


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