孤独な大富豪 – フォックスキャッチャー

映画「フォックスキャッチャー」を観てきた。
監督は「マネーボール」でもメガホンをとったベネット・ミラー。

彼は実話を扱わせたら実にうまい。

話はロサンゼルスオリンピックのレスリングで金メダルを獲得したシュルツ兄弟と、彼らの面倒を見る大富豪ジョン・E・デュポンを中心に展開する。
兄と比べて華がなく、内にこもってしまいがちな弟マーク。
マークの父のように接し、家族に囲まれながらレスリングにまい進する兄デイブ。

デュポンは篤志家としてレスリングの発展、そしてオリンピックでの金メダル獲得をコーチという立場から目指すべく、彼ら兄弟をサポートしたいと思い、
二人に声をかけるものの、弟マークだけが彼の元でトレーニングに励む。

時が経って兄マークも合流し、兄弟がデュポンの世話になりながらオリンピックを目指すが、
真の人間の愛情・友情を感じることのないまま大人になったデュポンと兄弟の関係は次第にあらぬ方向へ進み、そして最後は…という形で話は終わる。

マネーボールから感じられたスポーツが持つ爽やかさは微塵も感じられない。
全編通して常に陰鬱な雰囲気が漂い、その雰囲気がデュポンの心情とシンクロしていることが伝わってくる。

内にこもりがちで人と接することが得意でないマークが兄に先駆けてデュポンの元で世話になり、
マークとデュポンが絆で結ばれる様子もどこか妙な不自然さがあり、それが共にそれまでの人生を通じて人との関係がうまく言った来なかったことを如実に示している。

2015年アカデミー賞のいくつかの部門でノミネートされた本作。
日本での興行収入は微妙な結果となりそうだけれども、決して遠くない過去にあった出来事、そして人と人の関係や生き方を考える上で観てみてはどうだろう。

コメントする