苦情処理のゴール 『となりのクレーマー』を読んで

最近、ニュースを賑わせているクレーマー。
このクレーマーについてデパートの現場にいた経験から対応策を色々と記しているのが『となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術 (中公新書ラクレ 244)』。
デパートだからというのもあるけれども、実に色々なクレーマーのいること!
クレームの裏に隠れるいやらしい魂胆(タカリなど)に対し、いかに毅然とした態度を持ってまた当方の非礼については誠意を持って対応すべきかを記している。


かくいうぼく。
今までで一度だけ、マジモードで店にクレームを言ったことがある(もちろん、タカリ目的じゃない)。
結婚式の引き出物(シャンパングラス)を某有名海外ブランドショップで購入した。
引き出物ということで、親も交えて納得の品物を選び、あとは式の直前に式場へ品物を届けてもらうという段取りだった。
品物は時間通りに届いたのだけど、実は中身が微妙に違っていたのがクレームの発端。
シャンパングラスは店で見たとおりのものでも、シャンパングラスの回りに施されていたデコレーションがされていない。
こちらは包装などトータルとしての評価で品物を選んだのに、なんだか裏切られた気分。
あまりにも納得できないし、なによりも引き出物としては貧相な印象なので早速店へ電話をした。
するとあろうことかこんな答えが。

「先月末をもってご覧頂いたときのデコレーションは廃止して、お客様のお手元に届いたものが現在のものでございます」

先方はこちらにデコレーションが替わるけどよいかとの事前連絡をまったくしていないし、開き直っている。
こちらの要求は、もちろんタカリじゃない。
店で見たときと同じデコレーションを施して欲しいこと(じゃなければ、選んでいなかったし…)。
こちらは散々言っているにもかかわらず、電話ではまったく埒が明かないので、直接店へ行って担当者に話をした。
でも、それでも話が平行線のまま。
本国でもデコレーションを廃止しているので、デコレーションの部材の入手は難しいという始末。
担当者には事態を解決しようという意欲がなく、「そんなこと言っても仕方ないだろ!」としか顔に書いていない(買い手からすると、どうしてもそう見えてしまっていた)。
マネージャーを呼び、なぜおたくの商品を選んだのかなど担当者に話したものと同じ内容を繰り返した。
話をマネージャーは理解した模様で、本国から残っている部材を取り寄せてなんとか対応させてもらう。
作業は品物を置いているホテルでさせてもらうけどよいか?との提案を受けて、迅速に対応してもらうことにした。
この話については結婚式場の担当者もビックリしていた(「ずいぶん、失礼な店ですね」という意味で)。
こうした経験があって、その後はその店の印象は随分と悪くなり当然リピートしていない。
『となりのクレーマー』では、苦情処理のゴールを「お客様を離さないこと」と定義している。
至極当然だと思う。
世の中の商売はリピートこそが大切なわけで、新規のお客を獲得するコストと比較するとリピートを維持するほうが随分と安いからでもあり、また彼らは新たなお客をつれてきてくれる存在でもあるから。
あのとき、店の担当者・マネージャーが「せっかくの晴れの舞台で不手際があって申し訳ありませんでした」の一言でも言えていたらぼくの気持ちも幾分すっきりしていただろうに、思い出すだけで式直前のバタバタも重なって大変だったときにエライことをしてくれたもんだとの感覚しか蘇ってこない。
困ったクレーマー、売り手の不手際により生じたクレーマー。
ともに、お客は何が目的で、何を解決したら大人しく帰ってさらにお店に戻ってきてくれるのか。
商売をする上でおろそかにできない視点だ。
※当の有名海外ブランドショップはぼくたちへと同じような対応をしていたからなのかどうかは知らないけど、売上が落ちていることを追記しておく。

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