ファンを作る施設見学を介したコミュニケーション  -IVLESAモデルから見学者の行動様式を把握する-

近年、テレビや雑誌などメディアで取り上げられることの多い、工場見学をはじめとした施設見学というレジャー。お手頃価格(大半は無料かそれに近い料金)で家族揃って楽しめるなど、人気の理由もさまざまだ。
人気を背景に、旅行会社、自治体が見学ツアーを企画・開催するなど、観光産業のコンテンツとして高い注目を集め、見学ビジネスを取り巻く環境は盛り上がっている。

こうした流れの中で、施設を公開する企業・団体が見学者とどのように接するか。この点が、今後このビジネスが発展を遂げるための最大のカギだろう。需要側(見学者、旅行会社、自治体など)がいくら盛り上がっても、実際の供給側(企業・団体などの施設)が需要側のニーズに応えられない、そして施設を公開・有効活用する意義を見いだせないようでは、見学ビジネスの成長に限りがある。

企業の広告投資が下落傾向にあることは既に多くのところで語られている通りだ。広告を掲載するメディアへの接触が下がっている以上、投資対効果の観点から二の足を踏むのは、企業経営の観点からは極めて合理的な判断である。広告宣伝に対する消費者の心理プロセスを示す"AIDMA"でいう"最初のA"がかつてほどの威力を持たなくなったがために、"最後のA"に達した時は随分とパイのサイズが縮小してしまっているとも言い換えられる。もっとも、メディアを介した広告は不特定多数にメッセージを発信できるという強みがある。すなわち、メディアへのユーザーの接触なくしてコミュニケーションが成立しないものだ。したがって、メディアのコンテンツに魅力がなければ"最初のA"を喚起することは難しいし、最終的な広告主の目的を実現することもおぼつかない。


では、弊社が注力している「見学施設を介したコミュニケーション(以下、「見学コミュニケーション」)」はどうか。広告との最大の違いが情報の受け手の姿ではないか。広告がメッセージに対し受動的なのに対し、「見学コミュニケーション」は関心の高いユーザーが見学しながら自ら情報を収集するという能動的な性格を持っている。そして、これまで多くの施設を見学して筆者が認識したことが、多くの見学者は知的好奇心が旺盛なことである。疑問に感じた点は見学中に質問したり展示物に触れたりと、極めて能動的だ。運営者側もそうした好奇心を満たすためにクイズを出題するなどの工夫を凝らしている。能動的な彼らは、blogなどで情報発信するための撮影にも熱心で、それぞれがツボにハマったものを撮影し、コメントとともにblogにアップデートして情報を共有する。もちろん、見学で不満であればそういった内容のものも書き込まれるが、得てして見学後の肯定的な意見が書き込まれ、そこに企業・商品に対する共感ともとれる感情も表れている。そして、その企業·商品のファンとなって顧客としてさらに強固な関係(含む、購入)の構築が見込まれるのである。「見学コミュニケーション」は従来は情報に対し受動的とされていたユーザーが、情報に対して「能動的」な姿勢を示し、それが堅い絆の構築に結びつくことに大きな特徴がある。

この一連の流れを広告のAIDMAにならって、下記のような「IVLESA」モデルを提示したい。

見学施設コミュニケーションでのIVLESAモデル

市場での知名度の高くない企業・商品が不特定多数に向けて広告を出すことは、これからもその効果は期待されるだろう。しかし、知名度が既に高く世間に浸透しているのであれば、「見学コミュニケーション」は現実の姿をオープンにすることによってユーザーとの強固な関係を構築することが期待できるだろう。企業の商品に対する想い、働く人々の姿など、既存の広告やネットだけの情報では把握できないものがコミュニケーションでの重要なコンテンツとして流れ、新たなファンを生み出していくのである。

生の姿を提供して情報発信を実現する「見学コミュニケーション」は、新たなコミュニケーションのカタチを模索する企業にとっては検討するに値するものだと提案したい。

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