北京オリンピックもあと僅か。 オリンピックの表彰台に上ることのできる選手は僅か3人であり、ビジネスシーンも同様で業界に君臨できるのは僅かに限られている。当レポートでは、表彰台の当落線上にある3位品目を製造・販売している企業(銅メダリスト)に焦点を当て、彼らが業界で置かれている位置づけを明らかにしてみる。
なお、分析に当たってのデータは日経産業新聞「市場占有率」の2004年版(2002年集計データ)から2008年版(2006年集計データ)の5年分(135品目)を参照している。シェア算出については「売上金額」「販売数量」など参照データを単純平均している(「売上金額」もしくは「販売数量」に統一していない)。
苦境に立つ業界3位
日常生活での格差が叫ばれて久しいがビジネスでの格差もここ数年進んでおり、その証左として1位品目のシェアが図1のとおり逓増している。また、上位3品目合計では、59.8%(2002年)→61.1%(2006年)と上位へのシェア集中が加速している。
しかし、上位3品目の各々の推移に目を転じると、銅メダリストのシェアは伸びるどころか、2002年から2006年にかけて低下している。つまり、上位3品目合計のシェア拡大は上位2品目の伸びが3位品目の衰退を補うほどの伸びを示しているのである。さらに注目すべきは、2位と3位との差が拡大しているのに反し、3位と4位の差が縮小するという、3位にとっては上位をうかがうどころか下位からの脅威にさらされるという苦しい状況にある(図2)。
業界3位が苦境に立つワケ
3位品目にとって上記のような厳しい状況がなぜ生まれつつあるのか。シェア増減に伴うランク上下の要因を3位品目の成長・衰退、および上位品目の衰退、下位品目の成長に分類してまとめてみた(図3)。なお、「成長」「衰退」の定義は表1のとおり。
表1
図3から次の3点が特徴として挙げられる。
- 2位品目と3位品目とのシェア差拡大にも関わらず、2位と3位の逆転件数が最も多い
- 3位品目の上昇は自らの成長により実現
- 3位品目の転落の要因は、下位の成長よりも3位自らの衰退による
2位と3位の逆転
1.図2では2位品目とでここ数年の間にシェア差が拡大傾向にあることを示したが、実際は2位と3位が逆転するケース件数は3位と4位が逆転するケースよりも多い。このことから、シェア拡大傾向にある2位と3位が逆転するためには、両者の間で大幅なシェアの増減が生じていると判断できる。
3位の努力の賜物
2.図3から、3位のランクが上昇したケースの内の約2/3が、3位品目の成長によって勝ち取ったものであり、その事実は3位品目が1位に大躍進するときにはより顕著である。すなわち、1.で示したように2位品目とのシェア差拡大の中で逆転するためには、3位品目企業による努力なくして実現はないということを示している。
3位の衰退
3.2.とは異なり4位との逆転では約1/2が3位の衰退による転落(4位品目自らの成長努力が逆転の要因であるというケースは2位と3位の間ほど多くない)が占め、3位が5位以下に転落するケースにではほとんどが3位の衰退によるものとなっている。一方で、2.で示したとおり3位が上位に食い込むには自らの成長によるケースが多く、上位品目の衰退による棚ぼた的な逆転は3位品目とその下位品目との関係ほど期待できない。
上記3つの特徴の通り、3位品目を扱う企業は上位との差が拡大する一方で下位との差が縮小し、油断すればすぐに逆転を許してしまうという極めて厳しい環境での舵取りが求められる存在である。
まとめ
かつてのように売上至上主義という風潮は薄らぎ、それがためにシェアの位置づけも幾分変化が生じている。だが、シェアや業界内での順位はわかりやすいという特徴も手伝って未だに注目を集めていることは紛れもない事実である。3位品目を扱う銅メダリストたる経営者にとって、自らの商品を表彰台に立たせるべく経営努力を行うのか(2位を追い越すには従来以上の努力が必要)、表彰台を守るための経営ではなく別の指標に基づいた経営を行うべく勇んで表彰台を降りるかの検討・意思決定を行うべき時期に差し掛かっている。
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