はじめに
新型コロナウイルスの影響が和らぎ、リアルな展示会が再び活発化している。筆者は、2025年4月2日から4日まで東京ビッグサイトで開催されている「マーケティングWeek」に参加し、出展者が顧客との関係をさらに深めるためのポイントをいくつか見出すことができた。以下、それぞれのポイントについて私見を述べたい。
なお2012年に、『初めての展示会出展で抑えておきたい10のポイント』とのタイトルでレポートを発表しており、本レポートは当時からのテクノロジーの進化を踏まえたバージョンアップ版という位置付けでお届けする。
また、前回は出展企業の前提条件を記載したが、今回は一般的な観点から論じることとする。
「出展」に関する注意ポイント
1. 助っ人の戦力化
社外の助っ人の力を借りている出展企業が散見された。助っ人の活用自体は問題ない。筆者自身も、以前所属していた会社でスキマバイトの方に協力をお願いした経験がある。前日に助っ人の募集をかけても人が集まるという便利な時代になったのは、スマホが普及していつでもどこでも仕事探しができるようになったなど、テクノロジーの進化によるところが大きい。
助っ人の活用は問題ないが、助っ人が依頼主(=出展企業)の製品・サービスについて理解し、来場者からの質問に対応できない場合の連携方法を共有しておくことは不可欠である。
筆者が以前担当した3日間の展示会では、各日異なる助っ人スタッフにサポートいただいた。合流後すぐに、取扱製品・サービスの紹介、期待する役割(名刺の入手と来場者の課題をメモする等)、対応が難しい場合の引継ぎ方法など、約10分のレクチャーを実施した。
来場者からは、誰が出展企業のスタッフで誰が助っ人なのかは見分けがつかない。だからこそ、助っ人スタッフとは最低限の情報連携を徹底し、有力な戦力として活用したい。
2. 名刺スキャナーの使用タイミングに配慮し、自然な関係構築へ
来場者と展示会スタッフの目が合ったら、展示会スタッフから声をかけるのが一般的だ。今回の展示会で見られた声かけのパターンは、大きく2つに分かれる。いきなり首からぶら下げている名刺QRコードを展示会スタッフが読み取ろうとするケースと、展示会スタッフが来場目的をヒアリングしたり自社の製品・サービスを紹介するケースだ。
個人的な見解だが、展示会スタッフが自社紹介などせずいきなりQRコードを読み取ろうとする行為は、あまり良い印象を与えない。展示会スタッフ自ら名刺を差し出すわけでもなく一方的に相手の情報を要求するような行為は、ビジネスマナーとして適切とは言えない。仮に助っ人で依頼主(=出展企業)としての名刺を持っていないのであれば、ブース責任者の名刺を事前に共有しておき「わたしは名刺を切らしており、責任者の名刺をお渡しします」という流れを事前に用意しておきたい。
王道ではあるが、まずはビジネスマナーの基本に立ち返り、自社製品・サービスの説明を行い、信頼関係を築いた上で、名刺交換やQRコード読み取りを行うのが望ましい。
3. 展示会後の迅速なフォローアップ
展示会で得た見込み顧客リストを有効活用するためには、終了後の迅速なフォローアップが不可欠だ。来場者データをMA/CRMへ取り込み、名刺の持ち主が既存顧客なのか、既に接点のある見込み顧客なのか、新規見込み顧客なのかを振り分ける。そしてその区分に基づいたフォローを行うことで、関係を深めることができる。MA/CRMツールの導入が大企業を中心に浸透してきているからこそ、データを有効活用しDX化を進めていきたいところだ。
今回、筆者は約20ブース訪問したが、来場当日にブース訪問のお礼メールを送ってくれたのはわずか1社にとどまった。過去の経験では、展示会終了から1ヶ月後にようやくお礼の連絡があったケースもある。これほど時間が経過すると、展示内容の記憶は薄れ、当初の関心も低下しており、出展企業が改めてアポイントを獲得することは極めて困難となる。
出展企業のマーケティング・営業チームは、展示会後のQRコードデータや名刺情報の収集から、誰がどのタイミングで見込み顧客へアプローチするかまで、展示会当日までに計画を立てておくべきである。
役割分担が不明確でアプローチが後手に回れば、せっかく入手した見込み顧客リストの価値は時間の経過とともに低下していく一方だ。
まとめ
以上のポイントを踏まえて、テクノロジーを活用した展示会出展を計画・運営することで、顧客との関係をより深め、効果的なマーケティング活動を展開することができる。見込み顧客と対面で接点を構築できる展示会という貴重な機会を有効活用し、事業の成長につなげていただきたい。
弊社では、展示会やウェビナーの企画・実行から開催後のフォロー(MA/CRMツールの運用を含む)まで一貫した支援を行っている。展示会やウェビナーの開催をご検討の際は、お気軽にご相談いただきたい。