震災に伴う負の連鎖を遮断しよう

3月11日に東北地方を襲った大地震が発生して、早1ヶ月(もうすぐ2ヶ月)。
原発や余震の問題から被災地への支援が迅速・十分に行えていないことはおろか行方不明者の捜索もままならず、被災地の方の疲労はピークをとうに越してしまうという極めて気の毒な状況が続いている。
メディアでは大きく報じられないものの、先行きの不透明感から悲しいことに自殺者が出だしているという事実から目を背けてはならない。
大震災が自殺という2次災害を生み出している現状を踏まえ、警察庁生活安全局生活安全企画課発表の『平成22年における自殺の概要』から今後さらに自殺が発生する危険性を示したい。
まず、『平成22年における自殺の概要』の中でまとめられた概要を紹介。

1.平成22年中における自殺者の総数は31,690人で、前年に比べ1,155(-3.5%)減少した。性別では、男性が22,283人で全体の70.3%を占めた。
2.「50歳代」が5,959人で全体の18.8%を占め、次いで「60歳代」( 5,908人 、18.6% )、「 40歳 代 」( 5,165人 、16.3% )、「 30歳 代 」( 4, 596人、14.5%)の順となっており、この順位は前年と同じである。
3.「無職者」が18,673人で全体の58.9%を占めて最も多く、次いで「被雇用者・勤め人」(8,568人、27.0%)、「自営業・家族従事者」 (2,738人、8.6%)、「学生・生徒等」(928人、2.9%)の順となっ ており、この順位は前年と同じである(図.職業別自殺者推移)。
4.原因・動機が明らかなもののうち、その原因・動機が、「健康問題」にあるものが15,802人で最も多く、次いで「経済・生活問題」 (7,438人)、「家庭問題」(4,497人)、「勤務問題」(2,590人)の 順となっており、この順位は前年と同じである(図.自殺理由/経済的理由による自殺者数推移)。

職業別自殺者数推移
自殺理由
経済的理由による自殺者数推移
さて、この度の大震災で最も被害の大きかった宮城・福島・茨城県(以下、被災地3県)だが、東京や大阪などの大都市圏とは比べて、農業・漁業などに携わるなど自営業者の割合が高い(=被雇用者が少ない)という特徴がある。
総務省統計局の「労働力調査(平成23年2月分)」によると、全国の自営業者と被雇用者数はそれぞれ711万人、5,475万人でおよそ1:8の比率が成立していると理解できる。被災地3県の比率は調べきれていないが少なくとも全国比率に比べて同等もしくは幾分低いと見ることができよう。
翻って、自殺者の比率で見るとどうだろう。全国の自営業者と被雇用者の自殺者数はそれぞれ3、708人、10,845万人でおよそ1:3の比率が成立しており、自営業者の自殺率が被雇用者数と比べて高いことが容易に理解できる。
そして、自営業者の自殺者数増大を押し上げている最大の理由が「経済・生活問題」だ。自営業者はこの理由のために多くが命を落としている。データから男性が女性よりも自殺する可能性が高いことも、不安を大きくさせる。
自殺者に他の職業への変更が難しい年代(40-60代)の人が多いことも見逃せない。
原発の問題から、女性・子供へのケアが優先されがちだけど、一方で稼ぎ手である男性へのケア(特に経済面)が欠けてしまえば、女性・子供へも副次的な影響が及ぼすことは難くない。
日銀は復興支援で低利融資を創設するようだけど、ぜひとも被災者が経済的な苦難から開放されるようなサポートに尽力してもらいたい。

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