『「立入禁止」をゆく 都市の足下・頭上に広がる未開地』

多くの人が暮らす都市。
多くとはどのくらいなのかというと、世界銀行の統計(2013年)によれば世界の人口の53%が都市に住んでいる(世界人口70億人とすれば35億人以上が都市に住む)。
日本は92%が住んでいる。

都市に暮らす人口の割合は、今後ますます高まっていく。
都市に人口が集中することに伴い、地方の過疎化が進展すると同時に都市開発も加速する。
そして都市開発が進むことは、新たに建てられる建造物もあれば、誰にも使われることなく廃墟となるものがあることを意味している。

都市の新たな建造物、廃墟を探検する者のことを「都市探検家」と呼び、それが本書のメインテーマだ。
本書に登場する人物は、ロンドンの地下鉄(含む廃線)、パリのカタコンベ、ラスベガスの高層ホテルなど、好奇心が赴くままに探検をする。
しかし、その裏には入念な準備や決まり事などがある。
もちろん、彼らの行為は建造物不法侵入などの罪に問われる違法行為だ。
だから、当局との間のトラブルは絶えず、当然逮捕されることだってある。
にもかかわらず、彼らは探検に値するところがあるかぎり、逮捕そして時として命の危険を犯してでも(実際にビルから落下して死亡した例など)探検に挑む。

東京に都市探検家がいるかはぼくは知らない。
皆無でないものの、限りなく少ないはずだ。

都市探検に興味がなくても本書を読むと、東京の入り組んだ地下鉄や下水道網はどうなっているのだろうかと思いが浮かんでくる。
とりわけ、皇居の下がどうなっているのか、とある検察官僚OBがテレビで話していたように緊急時の避難ルートは整備されているのかなど大いに気になるところだ。

ちなみに本書では著者・訳者がどのような人物なのかは一切裏表紙などで紹介されていなかった(訳者あとがきで著者の紹介は少々)。
amazonの洋書版をチェックすると、著者の紹介とともに彼のサイトURLが紹介されていたので、気になる人はぜひチェックを。
www.bradleygarrett.com

「立入禁止」をゆく -都市の足下・頭上に広がる未開地-
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