映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』からホームレスについてちょっと考えてみた

映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』を観た。

ニューヨークで暮らすホームレス(完全な無職ではなく、仕事はフリーのファッションカメラマン)を題材にしたドキュメンタリー映画だ。

ホームレスは自分の意志でなることもあれば思いもよらないボタンの掛け違いによってホームレスになることもあり、
どちらかというと後者によってホームレスになることが大半だ。
「人生、一寸先は闇」とはよく言ったものだ。

この映画の主人公であるMark Reayはどちらかというと前者。
ミニマリストとしての生活を楽しんでいる部分もある(とはいえ、決して生活に余裕があるわけではない)。

ホームレスを語る上で忘れてはならないのが社会から孤立しているかということ。
幸い、Markはカメラマンの仕事をしていることから仲間にも恵まれ、
ニューヨークの街中では可愛い子を目にしたら声を掛けて写真を取らせてもらう社交性を備えている(誕生日だって仲間に祝ってもらっている)。

けれども、実際の多くのホームレスはというと、
社会とのつながりを断ち、
現状からの抜け道を見いだせないままなす術もなく受け身に徹してしまう。

Markはホームレスという道を選び、なおかつ社会との関わりを持っていて社会に対して諦めているわけではないので、
映画自体は決して暗いわけでもホームレスの辛さを伝えるわけでもない。

明るいホームレスから見た、
ニューヨークの今、そしてモード界の今というのが映画なのかもしれない。

社会派であるものの、Markの暮らしに焦点を当てることによって、
現実の重苦しさを和らげ、多くの人に馴染みやすい作りになっている。
なので、ホームレスに興味のある人、最近のニューヨーク事情を知りたい人、
ファッション業界について興味ある人のいずれかは観ると楽しめるハズだ(ニューヨークには、20年前、10年前に行ったことがあり、この周期に基づくとそろそろ行かねば!)。

では、ホームレスの実際というか多くのホームレスについて目を向けたらどうだろう。
望んでホームレスになったわけでなく、社会から孤立していて復活の術がみつからないのが大勢のパターンだろう。
総務省が発表している統計情報によると、
2016年12月の国内完全失業者は193万人(失業率3.1%)。

193万人の失業者と統計には現れてこない貧困者。
彼らのうち、どのくらいがMarkのようなポジションにいるのだろうか、
おそらく、日本では極めて稀で大半は望まずにホームレスになり、
社会から孤立している存在だろう。

こうした人が再び社会に復帰し、
社会の構成員として世の中を作っていける仕組みづくり、
それって言うのは簡単だけど実際にどうすれば良いかはなかなかの難問ではあるけれども、
これについては問題意識を多くの人が持っておくべきだと思う。
なぜなら、冒頭にも書いたとおり、
人生、一寸先は闇なのだから。
これまでの社会と異なり、会社は従業員を守ってくれる存在ではなくなり、
守ってくれる存在と期待されている会社そのものだって、
安定していると目されているものであっても脆くも崩壊してしまうというのが、
昨今の大企業の倒産例から容易に想像がつく。

ホームレスになってしまうというのは、
誰にでも起こる可能性があるわけであり、
その可能性を念頭に入れ、
予め自分がなってしまっても社会に復帰できるような意識・仕組み作りをしておきたいもの。

ちなみに、この映画のプロモーションは面白く、
Mark Reayの日本での就職活動を支援するという名目でクラウドファンディングを行っている。
2/2時点で、50万円弱の支援金が寄せられている!

肩の力を入れず気張らずに楽しめるのでぜひ映画館で観てね。

ニューヨーク、行きたい!

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