ぼくが小さかったころ、我が家にはずいぶんといろいろな種類のブロックがあった。
残念ながら、ほとんどのブロックの名前は忘れてしまった。
けれども、Legoの名前だけは覚えている。
きっと、ぼくと同じような年代(30歳前後)の人であれば、Legoは知っていることだろう。
Business Weekのオンライン版にLegoに関する記事(”For Lego, an Online Lifeline?“)が掲載されている。
記事では、子供の遊びの変化に伴いLegoの経営は悪化していたが、ネットとの相乗効果を発揮したことにより業績が回復してきていると書かれている。
では、どのようにLegoは業績を回復させたのだろうか。
記事から一部抜粋しながら紹介しよう。
1.ネットとの融合
The toy keeping Neal’s interest these days is a tool called Lego Digital Designer. It’s a piece of free software Neal downloaded from the Lego Web site that lets him create his own 3D models. Earlier this year, Neal submitted a bunch of his models to a design contest sponsored by Lego. In February, he was selected as 1 of 10 contest winners by his peers out of 8,000 submissions.
ブロックは手で組み立てる(リアル)という概念を守りながらも、ダウンロードされたソフトウェアを用いても組み立てる(バーチャル)ことを実現することで、Legoはネットやゲームといったおもちゃと同じような土俵に立つことができたのだ。
ぼくは、Legoがとったこの戦略は、いかに子供が持つ時間の中でLegoに接する時間を増やすべきかという課題を抱えて取り組んだ結果に生まれたものだと思う。
子供がテレビやパソコンの画面の前で過ごす時間は増えている。
そうした中、テレビやパソコンから離れてブロックを組み立てようと思う子供はそれほど多くないだろう。
ならば、パソコンの前に座りながらもLegoに触れてもらおうという考えが浮かんだと思っている。
そうであるならば、Legoのライバルは他のブロックメーカーやおもちゃメーカーではなく、ネットゲームなどになっていくのだろう。
2.商品はユーザー発
As a reward, Lego this July began selling those models on its Web site. Neal’s pirate ship is part of an amusement-park set available for $69.99, and his Five Star Lego Hotel is featured in an airport set retailing for $39.99.
上で紹介したNeal少年が作ったモデル(Legoのサイトにて紹介、ココ)は、それぞれ店頭で販売されている。
この戦略にはこのような効果が。
a.ユーザーとの関係強化
子供でなくとも、自分の作品が商品として店頭に並べられ、仲間から「すっげぇ~」と褒められて悪い気をすることは決してない。
むしろ、表彰されることで、さらに制作意欲が高まるのでよりいっそうLegoとの関係を深めていく効果がある。
ぼく自身、あるサイトで定期的にレポートを公開してもらっていて、アクセスが伸びたりコメントをもらったりすると、もっとレポートをがんばって囲うという気が湧いてくる。
きっとぼくのような心理になる人々の気持ちを刺激し、Legoファンの拡大・維持を図ろうとしているのだろう。
b.外部開発力の強化
ユーザーの大半が子供というLegoでは、どうしても大人の開発者が作るとホームランをかっ飛ばすことはあってもその本数はそれほど多くなく、せめて2塁打がいいところなのかもしれない。
野球の成績で言うところの「塁打数」が少ないと言えばわかりやすいか。
一方、ユーザーでもある子供が商品の開発をするならば、塁打数は大人が開発するよりもきっと高くなるだろう。
ユーザーの声を聞いて、それを生産側が自分のイメージと融合させるよりも、時間・手間がかからないばかりか、ユーザーのイメージとマッチしたものが商品化されるというメリットがある。
ただ、1つ気をつけないといけないことがあるとするなら、コンテストでユーザーに人気を得られないようなものを優勝させてしまうことだろう。
誰もが「あれなら欲しい!」と言えるものでないと、コンテスト出展者たちは「なぁ~んだ、Legoのセンスはわからないなぁ。センスが合わないから出展するのやめようぜ」という雰囲気に陥ってしまい、ユーザーの声を拾い上げるというプロセスは崩壊してしまう可能性だってある。
Legoはネットとの融合などのほかにLego Landなどをアメリカの投資ファンドに売却、大規模なリストラの実施により、業績を大幅に回復させることに成功した(売上高21%増)。
今後、さらなる競争力強化を目指して、Legoは次の一手を繰り出そうとしている。
それは、Lego Factory(上記で紹介したネットでのブロックデザインツール)のニューバージョンのリリース。
さらにネットとの融合を試みるということ。
Legoのネットとの融合戦略は、子供向けマーケティング、リナックスのようなオープンソース開発、伝統企業のマーケティングなど多くの分野でも活用できるケースだと思うので、マーケティングなどに興味のある人はこの会社のとるべき戦略などについて考えてみると非常に興味深いのではないだろうか。