Buenos Airesという街の名は日本語で「よい空気」と訳される。
Buenos Airesという街の語源については諸説があるものの、直訳されたものが語源だとすればそろそろ改名すべき時期なのかもしれない。
というのも、自動車の発する排気ガスで空気が汚れすぎているからだ。
いまだにたくさんの古い車が街中を走っているのだから空気が汚れて当然。
市民の交通の中心が、細い道でもアクセルを踏み込んで走るバスというのも空気の汚れに拍車をかけている。
アルゼンチンで、THE BOOMの島唄が大流行していたのは日本の一部でも知られている通り。
時間の流れが早いのは洋の東西を問わずここアルゼンチンも同様で、もはや島唄は街中で聴かれることはない。
現在のアルゼンチンでは意外なことにSalsaが街中で流れている(Salsaは南米北部から中米が中心)。
さて、ぼくらはNew YorkのJFKを23:30のLAN航空に乗り込み、ペルーLima経由のチリSantiago行きに乗り、そこで飛行機を乗り換えてアルゼンチンのBuenos Airesへたどりついた(Santiagoを発ってすぐ眼下に広がるアンデスの頂きは圧巻!ここで飛行機が落ちたら映画「生きてこそ」の世界だなと想像)。
妻にとっては初めての赤道越え。
ぼくにとってアルゼンチンは学生時代に南米大陸を縦断して以来の2度目の訪問であり、アルゼンチンの通貨危機が訪れる前だった。
当時はアルゼンチンの1ペソがUS$1にペッグされていて、買い物をするにも宿に泊まるにもUS$を用い、アルゼンチンペソを目にした機会はほとんどなかった。
通貨危機が終焉し変動相場制が導入されたこととあわせて、市中にはアルゼンチンペソの流通が活発化した。
現在ではもはや日常生活でUS$を使うこともなければ、店先でUS$が表示されることもなくなってしまった。
Buenos Airesでの出来事を簡単にまとめる前に事実情報を。
US$1≒2.8pesos(2005年9月25日現在)
コカコーラ(500mlペットボトル)=1.75pesos
ビッグマックコンボ(ポテト、ソフトドリンク共にMサイズ)=8.25pesos
インターネットカフェ=0.7pesos/h
【Diego, mi dio!】
アルゼンチンといえば、サッカー大国であることは多くの人も知っている通り。
日本が初めてワールドカップに出場したときに対戦したことからも、比較的なじみの強い国のことだろう。
Jリーグの初代得点王はアルゼンチン人のRamon Diasであり、彼のほかにも多くのアルゼンチン人プレイヤーがこれまでJリーグでプレイしている。
この国で最も有名な選手といえば、Diego Maradonaにおいて他はいない。
引退して随分経った今でも、街中のサッカーショップ、土産物屋では彼の写真、DVD、ユニフォームのレプリカが所狭しと並べられている。
Maradona in Shop
アルゼンチンでもっとも人気のあるBoca Juniorsのスタジアムへ見学に訪れた。
スタジアム内には博物館が併設されており、これが実に見ごたえのある内容だった。
歴代のBocaの選手の写真が飾られているほか(もちろん、Maradonaの写真も。日本人としてはドイツで活躍している高原の写真が飾られていたのはうれしかった)、これまでのビッグマッチの映像上映などがされていた。
なかでもぼくの心をとらえたのは、大きなサッカーボールの中で上映された映像。
自分がBocaの選手となった気分を360°パノラマ映像を通じて体感できる。
こんな映像を見せられた日には、アルゼンチンの少年の心はBocaの虜となり、Bocaに入るべくサッカーの練習に励むはずだろう。
ぼくのような年齢の人は、この映像を見てついついBocaのマーチャンを手にとってしまいたくなることだろう。
実にうまくマーケティング戦略が練られていると思う。
南米を訪れるサッカーファン、マーケターの人にとってはオススメの場所。
Estadio de Boca
Brandesen 805
博物館+スタジアム入場料=9pesos
Diego Maradona
あどけない笑顔が初々しい
TAKAHARA
来年のワールドカップでの活躍を期待。日本代表FWの中では最も期待。最大の敵はエコノミー症候群?
結婚、オメデトー!
Angel with Maradona
この絵のユーモアセンスには脱帽!
【Casino in Buenos Aires】
Las Vegas、Atlantic Cityに続き、Buenos Airesでもカジノに足を運んだ。
ぼく自身カジノで遊ばないけれどもLas Vegasでカジノを見て以来、いろいろな場所のカジノを見比べてみようという気持ちになったからだ。
Buenos Airesのカジノは、洋上に浮かぶ船の中で営業されている。
船の中にカジノがあるのはよくみる光景だ。
もともとBuenos Aires市はカジノの営業を禁じていたのだけれども、洋上であれば市の管轄外であり法も適用されないだろうとカジノ営業者が法解釈して設立された。
カジノは市の南東に位置し、市の中心街からはカジノ直通の無料シャトルバスも運行されている。
ぼくはシャトルバスの乗り場がよくわからなかったので、市バス(#152)に乗って最寄りのバス停まで行き、そこから歩いた(Avenida Brasil辺りで降りるとよい。徒歩5分程度)。
カジノの駐車場の入り口に着いたとき、随分と閑散としているなとの印象を受けた。
広々とした駐車場に車がせいぜい2割程度しか止まっていなかったのだから、閑散としているという印象を受けても仕方ない。
カジノが入っている船の周りに何があるわけでなく、ただの港といった雰囲気なのが閑散とした雰囲気をさらに高めていた。
入り口で危険物を持っていないか持ち物チェックを受け船内へ。
船内に入ると、駐車場の雰囲気とはうってかわり大変な大賑わい。
どのテーブルも人で賑わい、多くのスロットマシーンにも人が腰をかけていた。
客がテーブルにつくのをぼんやりと待っているディーラーは数えるほどしかいなかった。
カジノディーラーは大半が南米系の人々。
Las VegasやAtlantic Cityと違ってアジア系のディーラーは目にしなかった。
もともと陽気な南米の人たちがディーリングするのだから、フロアの雰囲気は明るく客も負けていたとしても笑顔でいられることだろう(ギャンブルでは負けている客をいかに楽しませるかが重要だと思う)。
カジノ会場としての船は決して大きくない。
4階建てながら各フロアの大きさは湖のちょっとした遊覧船と同じようなサイズ。
このサイズでも十分にカジノとしてのビジネスが成立しているというのは、ショッピング・コンベンション・ホテルなどで収益の半分を稼ぎ出すLas Vegasなどのカジノとは異なる点だし、カジノビジネスの研究題材としては十分参考となるだろう。
客は地元の人も多いが、やはり観光客も多い。
観光客が多いせいもあり、駐車場は閑散としていたということだ。
その分、タクシーや無料シャトルバスで乗り付ける客は多かった。
ぼくがカジノへ行ったのは夕方ころで、ぼくが帰るころには数台のタクシーが連なってカジノの入り口に乗り入れていたことは、このカジノが流行っていることを表す1つの事実だ。
街中ではほとんど目にすることのなかったアジア系の客も多少いた。
カジノを後にするとき、出口でカジノの宣伝を含んだチョコレートをもらった。
こうしたギフトをもらうと、少々心をくすぐられる。
おみやげ
カジノを運営しているのはCirsa社で、どうやらスペイン系の会社で会社概要によるとカジノ以外のビジネスも手がけている様子。
アメリカのカジノ企業は進出しておらず、アメリカ企業の進出によりBuenos Airesのカジノビジネスに変化が訪れるのかに興味が沸いてくる。
カジノの入り口
カジノが営業されている船
Cirsa社
カジノの駐車場にオフィスを構えている。
【ロケ誘致に積極的!】
今、Buenos Airesは各種映像のロケを積極的に誘致している。
Buenos Airesではないけれども、アルゼンチンで撮影されたもので有名な映画としてはBrad Pittが主演した”Seven years in Tibet”がある。
ほかには、日産のCMで車が長いトレーラーを追い越すシーンはBuenos Airesで撮影された。
ぼくが滞在していた間で、撮影シーンを2回も目にした。
たった4日程度の滞在で2回というのは結構な数だと思う(東京ではほとんど目にすることはない)。
では、なぜBuenos Airesが撮影地として魅力的なのだろうか。
既にいろいろ言われているだろうけど、ぼくが実際にBuenos Airesの街を訪れて感じて得た理由としては次のようなのが挙げられる。
・ヨーロッパのテイストを多く残した町並みが魅力的(Buenos Airesは南米のParisと称される)
・スタッフの人件費が安い
・四季があるし、地形の変化も豊か(南は南極から北はパンパ(大草原)まで)
アルゼンチンの映画はそれほど有名ではない。
けれども、外国からの撮影によって現地のスタッフの技術力が高まることでいずれ高い質の映画が観られる日もそう遠くはないのかもしれない。
アルゼンチン映画シーンは今後要チェック。
雨のロケシーン
周りが晴れているのに、ホースから大量の水を噴射して撮影。
シーンに傘を持っていないぼくたちが入らないよう、ADが人の整理をしていた。
夜のオフィスシーン
通りにクレーンなど大量の機材を持ち出しての撮影。
警察も市政に関係している以上、協力して人員整理。
【おしゃべりにはやっぱり欠かせない携帯電話】
アルゼンチンも他国同様に携帯電話の普及度は高い。
もともとおしゃべり好きなラテンの人たちにはぼくたち日本人以上に携帯電話は欠かせないものなのかもしれない。
カフェでは手持ち無沙汰に携帯電話をいじる人も多い。
通話同様、メールも多く活用しているのだろう。
ただ、日本とは違ってアプリケーションを利用するまでは浸透していない様子だった(携帯電話にゲームをはじめとしたアプリケーションがインストールされているかは不明)。
Motorolaの端末が最も多く販売されていた。
それに続いて、Nokia、Samsung、Sony Ericsson、Siemensといったところか。
各端末の価格は安いものは99ペソから高いものとなると1299ペソ!(Sony Ericsson製)まで幅広いけれども、300ペソまでのレンジの商品が最も多く店頭に並んでいた。
Sony Ericssonの端末
【じわじわと外資系企業が進出】
Buenos AiresへはStarbucksの店舗が進出していない(Starbucksの店舗を目にしなかったのはアメリカから旅してきたぼくにとっては新鮮!)。
アルゼンチンの物価からUS$3相当のコーヒーを売り出すのはまだ難しいだろうし、だからといって値下げして販売するのもStarbucksのブランドイメージとの関連から相容れないので進出していないのだろう。
けれども、アメリカをはじめとした各国の企業の進出はやはり盛ん。
アメリカ系企業の中で最も積極的に進出しているのはMcDonaldやCoca Cola、Pepsiといった飲食関連。
これら企業は完全にアルゼンチンの生活の中に入り込んでいる。
IT企業の進出も盛んで、IBM、SUN、Microsoftといった企業が進出しIT企業のビルが固まって建っていた。
Accentureが、ぼくが両替で世話になったAmexのビルに入っていた。
日本企業の進出に関すると、Panasonicが大きな広告を出しているのを目にしたものの、それ以外は特に目立った印象はなかった。
Visa発行で行ったブラジル領事館と同じビルにHitachiが入っていたけれども。
一方、相対的にLGやSamsungなど韓国企業が積極的に看板を出して知名度の向上に努めていた。
一度は経済危機に陥ったものの、南米諸国の中ではブラジル、チリと並び経済的には優等生であるなどの理由に目をつけて、外資系企業はBuenos Airesから撤退せずにいるのだろう。
Microsoft in Buenos Aires
【We speak English】
南米はいわずと知れずスペイン語圏(除くブラジル)。
日本を旅する外国人が英語を使えないことで不便なのと同じように、ここ南米でも英語はほとんど通じない(日本よりはマシ!)。
Ezeisa(Buenos Airesの空港)に到着したぼくたちは、日本から持ってきた『地球の歩き方』のコピーの中からめぼしい宿を見つけ宿に予約の電話をした。
『地球の歩き方』にはスペイン語しか通じないと書かれていたけれども、まさにその通り。
ぼくのたどたどしいスペイン語で宿を探している旨を伝えると、「まあ来いや、来いや」という感じで電話口のじいさんがしわがれた声で言ってくれた。
宿はBuenos Airesの繁華街を1本奥に入り、階下には爆音を立ててバスが走る場所にあった。
宿の主は電話のときよりもマイルドな雰囲気を持った人。
宿はヨーロッパ建築の面影を持ち、清潔に保たれていた。
アルゼンチンの物価を考えたら激安というわけではないものの、コストバリューを考えると満足できるか。
Hotel Maipu, Maipu 735
宿泊費:40pesos(ダブル、シャワー・トイレ共同)、50pesos(ダブル、シャワー・トイレ付)
Hotel Maipuの中
『地球の歩き方』や”Lonely Planet”を読んでいると、英語を使って予約できることが特典のように書かれていることが多い。
レストランでも英語は全く通じず、だからこそ英語のメニューを用意しているレストランというのは当然のことながらスペイン語に自信のない旅行者でにぎわっていた。
日本でも店頭に”We have English menu”や”We speak English”と掲示できる店が増えたら、外国人旅行者にはもう少し旅のしやすい国として評価されるだろうにと遠く異国の地で感じた。
【その他】
肉、肉、肉!
アルゼンチンは世界一牛肉を食べる国。
牛肉を安く食べたいならアルゼンチンがオススメ。
Cervesa(ビール)
アルゼンチンで最大人気を誇るQuilmer。
味は日本のビールと比較して随分水っぽい。
Sports Shops
adidas、Puma、NIKE(左端)の店舗が並んでいる。
サッカー大国ということもあり、スポーツショップは多い。
BOCA
Boca JuniorsのスタジアムもあるBoca地域。
Tangoはここから生まれた。
Brutal BUS
Buenos Airesのバスの車体は路線によって異なる。
カラフルなくせして、運転はかなり乱暴。
でも、そこが南米らしい。
1回の乗車料金は0.8pesos
地下鉄
アルゼンチンには地下鉄も走っている。
日本の中古車両まで走っている。
1回の乗車料金は0.7pesos