Prahaはぼくがバックパッカーデビューした10年ほど前から注目していた街であり、その当時から「近代化する前に行っておけ!」とにわかに騒がれていた街でもある。
そのときから10年ばかし。
バックパッカーを騒がせたかつての神秘性は今も保たれているのか?という一抹の不安と、一方で旧東欧の国へ足を運ぶというわくわく感が交差しながら、ぼくたちはBerlinからの夜行バスに揺られ早朝のPrahaに降り立った。
【バスの旅なら南米に軍配】
久々に長距離バスに揺られた。
BerlinからPrahaへ移動するには約7時間かかる。
日照時間が短いヨーロッパの秋、日中に移動することはいろいろと見学したいぼくたちにとっては惜しく、そこでぼくたちはPrahaへは夜行バスを利用して移動した。
長距離バスに揺られるのはブラジルを発って以来だ。
Berlinのバスターミナルは西のはずれにあり、バスでの移動が発達していると言われるわりには妙に拍子抜けするほど殺風景なものだった。
夜行バスを利用したことを差し引いてもターミナルは静寂に包まれ、南米で接した喧騒というものはどこ吹く風邪といった様子だった。
バスに乗り込んでびっくりしたのが、前のシートとの幅が狭いこととリクライニングがほとんどできないこと。
リクライニングレバーを引っ張っても、10°ほどしかさらに傾かないし、ふくらはぎまでカバーするフットレストが用意されているわけでもない。
設置されているトイレはというと体の大きなヨーロッパ人にとっては窮屈この上なしといったもので、とても落ち着いて用を足せるものではない(トイレを利用する乗客はほとんどおらず、大半は休憩所で利用していた)。
あまりにもヨーロッパのバスの旅が快適でなさ過ぎることにびっくりしたぼくは、その夜車内でほとんど眠ることができず、Prahaに着いてしまった。
【ビール大国チェコ】
チェコはビールの産地でも有名な国。
中でもPilsner Urquellは日本の一部バーでも飲める銘柄だ。
Pilsner Urquellの工場は、Prahaから列車に1時間半ほど揺られたPlzenの街にある。
ビール工場のツアーの所要時間は約2時間。
英語ガイドがつくけれども、彼のチェコ訛りは「すごい」では言い表せないほどすごく、説明の最初は聞いていたものの、後半になるにつれ聞き取ろうと努力することに疲れてしまいすっかり傍観者になってしまった。
ツアーの最後には、もちろん出来立てのビールを飲むことができる。
ツアーガイドは毎日ツアーの度に(彼は1日に3回ガイドするらしい)ビールを飲むのがこの役職の特権だと威張っていた。
Pilsner Urquellの工場
チェコがどのくらいビール大国なのかを示すデータがKirinビールから発表されているのでご参考までに(クリック)。
国民1人あたりのビール消費量ではチェコ人がダントツだ(2003年 国別一人当たりビール消費量)。
チェコ人は日本人を基準にすると3.1倍の量を飲んでいる。
「3食ビールつき」と言っても言いすぎではない量(朝から飲んでいるわけではない)。
すごい!
【TOYOTA Arena】
Prahaを本拠地とする強豪サッカーチームSparta Prahaの本拠地のネーミングライツを今年からトヨタが買い取り、TOYOTA Arenaと改名された。
ネーミングライツビジネスに関心を持っているぼくとしてはぜひともチェックしておかなければならないスポット。
ぼくたちは、ノルウェーとのワールドカップ出場を賭けた最終予選プレイオフの激闘が繰り広げられた翌日にTOYOTA Arenaを訪れた(世界ランク2位のチェコは激闘の末辛くもワールドカップ出場の切符を獲得)。
スタジアムのキャパシティは決して大きくないものの、TOYOTAの広告は大きく表示されている。
ただし、どうもPrahaっ子の間ではTOYOTA arenaという名称は浸透していない印象を抱いた(現地で話をしたりして得た感触)。
未だに、Sparta Praha Stadiumで通っているし、ぼくが参照したバックパッカー向け地図にも同様の表記がされていた。
少々残念。
さらに残念なのは、ぼくたちが訪れたときSparta Prahaの成績は奮わず13位。
ちなみにPrahaの街中ではチェコの自動車メーカーSkoda(現在はVW Group傘下)の車が多く見られた。
TOYOTA arena
【一方通行すぎるチェコ人のコミュニケーション】
ドイツからチェコへ移動してきて最も驚いたのが、そこに住む人のキャラクターがこれほどまでに異なるということ。
「国境を接しているのに…」と何度も思わされた。
ドイツ人はぼくたち観光客に対して粘り強く丁寧に接してくれた。
電車の切符を買おうとカウンターに行っても、全工程の運賃をぼくたちから聞き出し鉄道パスを購入したほうが安いかどうかを検討してくれたし(こちらからお願いしたわけではない)、宿などいろいろな場所で「ドイツ人、親切で丁寧だなぁ」という印象を随分と抱かされた。
一方のチェコ人に関しては、今回の旅においては非常に残念な印象しか持てなかった。
一応誤解してほしくないのは、あくまでもぼくが接したチェコ人に限った話であるわけで、全国民が下記のようなキャラクターを持っているというわけではないということ。
・エピソード1
既に書いたとおり、ぼくたちはPlzenにあるPilsner Urquellの工場を訪問した。
工場見学に際し入場券を購入する必要があったのだけれども、その売り場の担当者は企業の窓口に置くにはとてもふさわしくない人物だった。
ぼくが英語ツアー参加の切符が欲しいんだけどと言っても大して反応しないし、何度か言ってようやく対応する始末。
そしてぼくからの用件を聞くなり背中越しに座っている年上の女性に対し、チェコ語で用件を伝え発券させていた。
つまり、このカウンターの女性、態度が悪いばかりか仕事の内容はただの通訳。
企業の顔とも言うツアー客対応の窓口にはふさわしくなさ過ぎる。
・エピソード2
Prahaの中央駅にある観光案内所での出来事。
ちょうどその日、チェコ対ノルウェーのワールドカップ出場を賭けた戦いが開催される模様で、駅には多くのサポーターが集結していた。
ぜひともサッカー観戦がしたくなり、開催場所・行き方・キックオフの時間を訊こうと観光案内所のブースへ向かった。
列に並んでいると、ぼくの前に並んでいた人がどうやら案内係員と険悪なムードになり、客はどなりながら去っていった。
ぼくたちの番となり、一応「英語でよろしいですか?」と訊いたところ係員は訊いてもいないのに「もちろんですわ。わたくし7カ国話せますもの。ところであなた何ヶ国語お話なさるの?」と鶏の首を絞めたような声を出す。
控えめに1ヶ国語だけと言い(こんなところで張り合っても仕方ない)、「今日のサッカーはどこで開催されどのように行けばいいですか?」と訊くと「あら、あなた、そんなことも知らないの?Sparta Praha Stadiumで26番のトラムに乗っていくのよ」と今度は白目をむきながらキンキン声を出す始末。
知らないから観光案内所に行くわけだし、そんなに敵対心丸出しに答えなくてもいいのに…。
はっきりいって、この人をPraha中央駅の観光案内所においておくのは、チェコの観光産業のために百害あって一利なしだと思う。
ぼくの前の人が喧嘩しながら去って行った理由に大いに納得できた。
・エピソード3
チェコにはユーロが導入されていないため、ぼくたちは現地通貨であるクローネに両替しなければ宿代は払えないし食事にもありつけないため、両替所に向かった。
両替所の窓には「No Commission」と書かれていたし、レートもよかったので両替したいお金をさっさとカウンターの向こうに渡してしまったのが悪夢の始まり。
受け取ったお金を数えてみると両替前に想定した金額よりも明らかに少ない。
なぜかと訊こうとすると、カウンターの向こうに座る両替商はカウンターの窓を閉めるでは。
しつこくワケを訊こうとすると、No Commissionが適用されるのはクローネから他の通貨に両替する場合のみだとか。
確かにNo Commissionに釣られ確認せずに両替したぼくに非があるものの、理由を訊こうとするとカウンターの窓を閉めて一切受け付けようとしない態度は不愉快極まりない。
どうして、このような嫌な出来事が多かったんだろうか。
チェコ人はプライドが妙に高いのか、決められた範囲以外は全く対応する必要はないと教育されているのだろうか。
なにかこの国には不機嫌にさせることでもあるのだろうか。
いろいろと考えを巡らせてみたものの、はっきりとした結論は得られないままこの国を後にしてしまった。
昨年旅行した共産主義国キューバのほうがよっぽどサービス精神は旺盛だったので、政治思想などでなく国民性の問題なのか。
わかりません…。
街並みも魅力がなくなってしまい、もしかしたら10年ほど前にバックパッカーたちの間で騒がれていたときが最も観光地として魅力的だったのかもしれない。
【クラシック作曲家が多く誕生】
チェコというと、他のヨーロッパ諸国同様、多くのクラシック作曲家を生み出した国でもある。
幼少の頃ピアノを習っていたぼく(昔はうまかった!)にとって、音楽を通じてなじみの深い国でもある。
この国でもっとも有名な作曲家といえば「モルダウ川」を作曲したスメタナ。
今も、Prahaではスメタナが愛されているらしく、Praha中央駅の列車発車チャイムには「モルダウ川」が流されている。
妙におかしいのは、不機嫌なこの街の人をよそに、発車チャイムだけが妙に軽快なこと。
「美しき川よモルダウよ~」という部分を音階で表すと「ミ、ラ~シ、ド~レ、ミ~ミミ~、ファ~ファ、ファ~ファ、ミ~」と滑らかだけれども、発車チャイムはスタッカートを多用して流れる。
「ミッ、ラッシ、ドッレ、ミッミミ~、ファッファ、ファッファ、ミ~」と言った感じ。
少しでも多くの人がPraha中央駅のチャイムに耳を傾けて、機嫌よくなってくれればいいのに。
【おすすめ度の低い宿】
Berlinで泊まったCircusからPrahaの宿を予約して押さえてもらった。
Circusのフロントに「どこがおすすめかなぁ」と訊いてみたら、予想外に中心地から離れた場所だったので、おすすめ以外の場所の予約を取ってもらった。
残念ながら、結果的にはおすすめを参考にしておけばと思うようなものだった。
フライヤーに「ホステル・エルフは世界中で一番!最高!です」って日本語で書かれているのを鵜呑みにしすぎてしまった。
周りの環境はあまりよいとは言えないし、スタッフもフレンドリーではなかった。
それにうるさすぎる。
うるさいのが嫌いな人にとっては居心地が悪そうだった。
Hostel Elf, Husitska 11, Prague 3
キッチンあり
インターネット無料(日本語入力不可)
宿泊費:435(ドミトリー)
【展覧会の写真】
PrahaにもCasino
駅構内にもCasinoがあるものの、どこも客はまばら。
物乞い
投資対象として有望とされる国ながら、こうした現実もあることは事実。
豚膝肉
豚の膝肉が代表的料理。
コラーゲンたっぷりなので、肌をきれいにしたい人にはおすすめだけど味ははっきりいってクドイ。