当初の今回のワールドツアーの計画ではトルコを訪問する予定ではなかった。
従来の計画であれば中東欧もしくはドイツからDubaiへ飛び、Dubaiの風にあたるはずだった。
けれども、なぜか中東欧諸国からDubaiへ飛ぶ航空運賃が軒並み高かったため(約US$2,000!)、行き先変更の検討を余儀なくされた。
約US$2,000も航空運賃に払うのであれば、改めて日本から訪れたほうがよい。
そして、ぼくたちが目指した行き先はトルコのIstanbul。
BudapestからIstanbulまでの移動は前エントリを参照。
今回、時間の関係でIstanbulしか滞在できなかった。
アジア側のAnkaraやCappadocciaなどへも訪れたかったけれど、いかんせん「時間」という制約がある以上、今回はIstanbulだけに限定して滞在し、そのなかで感じたトルコという国について少しでも整理できたらと思う。
【申し訳ないが神秘性はゼロ】
Istanbulの地を踏んで最初にぼくたちが思ったのは、イスラム教国家が持つ神秘性というものはもはやこの街には存在しないということ。
厳しい戒律によって行動が制限されるわけでもなく、街中では多くの若者が欧米から流れてきた文化にどっぷりと浸り、多くの人にとってEUに入ることこそが何よりも高い優先順位におかれている様子だった。
実際、街中では加盟していないにもかかわらずEUとトルコの旗が並んで高々と掲げられ、旅行代理店の店先などでは航空券の料金がユーロで表示されていたりする。
バザールにもトルコとEUの旗
イスラム教国家で観光立国であるモロッコと比較すると、個人的にはモロッコのほうがよりイスラムの匂いを多く吸えるだろう。
たとえば、モスクからコーランが流れてきてもこの街の人にとっては時報に過ぎないのではないか?と思わされるほど無関心であり、宗教とはもはや過去の遺産であるといっても過言ではないほどだ。
視点を変えると、厳しいイスラム教の制限がないことは非イスラム教徒にとって旅行がしやすい場所とも言え、イスラム圏への旅行がはじめてという観光客にとっては格好の観光地なのかもしれない。
イスラム教国家でも大々的にクリスマス準備
街中を走る近代的なトラム
スーパーで積み上げられた缶ビール
【日本語が妙にうますぎるトルコ人、そしてそれにうんざりするぼくたち日本人】
街を歩いていると、多くのトルコ人がぼくたちに声をかけてくる。
トルコ語でも英語でもなく日本語で。
彼らの話す日本語、はっきりいってウマイ。
話を聞いてみると、日本に行ったことのあるトルコ人、また親類が日本に住んでいるトルコ人が妙に多いことに気づく。
話が本当か嘘かはわからないものの、日本語をうまく話せる人が多いことは確か。
さらに話を突っ込んで聞いてみると、トルコ人が日本へ行く際、なんとビザは不要だとか。
ビザ申請を多くの外国人に求める日本政府でありながら、トルコ人には求めていないとは知らなかった。
確かにぼくたち日本人もトルコへ入国するためのビザは不要とは言うものの、隣国の中国人は未だにビザが必要だと言うことを踏まえるとなんとも妙に感じてしまう。
トルコ人は親日だと言われる理由は入国に際しビザが不要だということも関係しているのだろうか(トルコ人が親日だという理由は日露戦争でトルコの天敵ロシアを日本が破ったことに起因しているという説が有力)。
いずれにしても彼ら(とくにお土産屋)の日本語はうますぎ、彼らが頻繁に日本語で話しかけてくるものだから気が休まらない。
彼らは日本語同様に英語も話せるのに、欧米人に話しかけようとしないのはなぜなのだろうか。
トルコ人からお土産屋の営業をかけられるたびに次第にうんざりしていったぼくたちは、英語なのに話しかけられない欧米人が少々羨ましくも思った。
【あるトルコ人の本音】
日本語で話しかけられることにうんざりしていたぼくたちだけれども、日本語の話せるあるトルコ人との会話の中で「大変価値のある」トルコ人の本音に触れることができた。
上記の通り、トルコにおいてEUに入ることこそが多くの国民の願いであり、「EUに加盟できない」ということは想定の範囲外である。
EU加盟のためには多少の犠牲も仕方ないと別のトルコ人との会話からも嗅ぎ取ることができた。
それではぼくたちはどのような「本音」を耳にしたのか。
できるだけ忠実に本音を再現してみよう。
「わたし、日本で引越しのアルバイトをしていました。すごくしんどかったです。渋谷ではイラン人とかがテレホンカードを売っていましたが、はっきりいってああいうのはよくないですし、私たちトルコ人にも迷惑です。はっきりいって彼らと一緒にされるのがいやです。わたしたちトルコ人はもっと立派です。
EUに加盟したらトルコの物価はさらに上がりますよ。そうしたら日本の皆さんは高くて旅行できなくなるかもしれませんねぇ」。
話をしていてとにかく他の中東の国と一緒にされるのが嫌だということ、そしてEUへは必ず加盟できると信じていることがはっきりと伝わってきた。
これはたまたま話をした人の意見にしか過ぎないのだけれども、街中で多くの人が中東ではなくヨーロッパばかりに神経を注いでいる様子を見ると、多くの人が同じように感じていると推測するのはあながち的外れというわけでもなさそうだ。
とにかくEUに入ると恩恵が訪れると頑なに信じている。
物価が上昇しようが、公共投資増大に伴う増税が行われようが、EUに加盟できるのであればいかなる犠牲も厭わない。
上記の会話を交わした以外の人も、EUに加盟するためなら増税された生活へは我慢できると言っていた。
もしもトルコの加盟申請が否決されてしまったのなら…。
「失望」がこの国の空を覆い、国家の求心力が一気に低下してしまうのでは?と、不吉なシナリオがぼくの頭の中をめぐった。
【「Starbucksの存在」という指標】
旅をしていて、いろいろな国でStarbucksを目にした。
Istanbulの街中でもStarbucksの存在が確認できた。
ぼくにとってStarbucksが存在するか否かという事実はその国の経済水準を知る上での1つの基準であり、店舗を目にしたときには「この国は裕福なんだな」と理解するようにしていた。
逆に存在していないと、「この国の所得水準ではまだStarbucksのコーヒーは売れないんだな」と理解していた。
IstanbulのStarbucksの店舗には多くの顧客が入っており、決して安くはない(日本と同金額程度であり、Istanbulの物価から考えても高い)。
ただし、Starbucksが数店だけある国というのはまだ「本物」の裕福な国というわけではなくある一定の店舗数(分岐点はわからないが)を越えた時点で「本物」の裕福な国として認められるのだと解釈している。
そうするなら、トルコにはまだStarbucksが数店しか存在しておらず「本物」の裕福な国として位置づけるには時期尚早なのかもしれない。
ちなみに、2005年12月時点でStarbucksが進出している国は以下の通り(StarbucksのHPより)。
Australia
Austria
Bahamas
Bahrain
Canada
Chile
Cyprus
France
Germany
Greece
Hawaii
Hong Kong S.A.R.
Indonesia
Ireland
Japan
Jordan
Kuwait
Lebanon
Malaysia
Mexico
New Zealand
Oman
People`s Republic of China (Beijing)
People`s Republic of China (Shanghai)
People`s Republic of China (Southern China)
Peru
Philippines
Puerto Rico
Qatar
Saudi Arabia
Singapore
South Korea
Spain
Switzerland
Taiwan
Thailand
Turkey
United Arab Emirates
United Kingdom
United States
IstanbulのStarbucks
StarbucksのほかにApple Storeが進出しているかどうかも基準の1つなのかもしれない。
【添乗員、レッドカード!】
Istanbulの観光スポットの1つ、Blue mosqueを拝観していたときの話。
多くの観光客がBlue mosqueを訪れ壁や天井のタイルを眺めていたら、大勢の日本人観光客がBlue mosqueの中に入ってきた。
そして現地ガイドの説明に耳を傾ける。
ここまではよくあるツアーの光景。
現地ガイドの説明が終わると、日本人添乗員(女性)がBlue mosqueでの滞在時間と見学後の集合場所をツアー参加者に連絡していた。
見学時間があまりにも短いのはツアーの悲しいところでありもはや驚かないものの、見学時間が短いことなんてどうでもいいような爆弾発言を添乗員がかましてくれていた。
はっきりいってこの添乗員には即刻レッドカードを出すべき。
彼女、こんなことを言っていた。
「2:25分に外で集合してください。こちらBlue mosqueでの写真撮影はOKです。フラッシュもOKです。なんでもOKです。」
この発言にぼくと妻は顔を見合わせた。
「なんでもOKです」はないだろ?
信仰心が薄く見えるIstanbulであっても一部の人は熱心にIslamの教えに従い、Mosqueの中では熱心にお祈りをしている。
そうした人たちの気持ちへの敬意はそっちのけで「なんでもOK」とはどういうことか。
フラッシュをたくことすらいかがなものかと思うぼくは堅物なのだろうか。
もう少し言い方というものがあるだろうに…。
宗教というものにはまったく関心のないぼくだけれども、他人の心のよりどころに土足で踏み込むことを容認するような発言をするこの添乗員、情けなくて仕方がない。
【トルコはEUに加盟できるか?】
ワールドカップの地区予選はヨーロッパに属しているトルコであるが、彼らはヨーロッパの一員となれるのだろうか。
財政事情など数値で定められたEUへの加盟基準はクリアできるのかもしれない。
数値上の基準は努力さえすればどうにかなるだろう。
けれども、数値ではクリアできない価値観や文化でEUにすんなりと加盟できるのだろうか。
ヨーロッパから大陸を横断してきたぼくたち夫婦の間ではトルコの人たちとそのほかのヨーロッパの人たちには価値観など考え方における相違というものが存在し、その明示しにくいハードルこそが最大のハードルとして彼らに立ちはだかるのでは?と一致した。
何が違うのか?
言葉でははっきりと表現できない。
それほど曖昧でありだからこそ、トルコ人がぼくのような回答をされたら納得いかないだろうし、納得しないどころか怒り出すかもしれない。
なぜ、トルコは中東の雄としてこの地域の安定と平和に力を注ごうとしないのだろうか。
ヨーロッパの中でしっくりこないなぁと言われるよりかは、中東の中で認められてぐいぐい引っ張ればいいのにと思ってしまう。
経済的な点、ヨーロッパへ簡単に移住できる点などがそれほど魅力的なのだろうか。
EUに加盟することを心から信じている人たちに向かって突っ込んだことを訊けなかったのでこれ以上は触れられないが、どこかしっくりこなかったことは確かだ。
旧ソ連はキリスト教国、イスラム教国がうまくいっていたかどうかはさておき、よく長い間連邦国家として成していていたものだと改めて感心してしまった。
【Istanbulへ観光に来るのであれば】
Istanbulの観光スポットはかなり限られたエリアに集中している。
これほどまでに観光スポットが凝縮しているのか?と訪れたぼくたちがびっくりしたほど行動範囲は狭い。
Blue MosqueやAya Sofiaが観光スポットの中心でありHammam(トルコ式風呂)も多い。
にもかかわらず、多くの欧米系大手ホテルチェーンはこのエリアに進出していない。
進出していないのではなく進出できないというのが正直なところだろう。
大型ホテルを建造できるほどの大きな敷地がないからだ。
そうした中、Aya SofiaとBlue Mosqueを臨む好立地にFour Seasonsが。
とりかく立地は最高!
そして、周りの環境との調和を考えて高層でないところがよい。
ツアーでIstanbulを訪れるのであれば、宿泊ホテルがどこかを確認しておくとよいだろう。
もし、ビジネスでIstanbulへ訪れるのであれば、Taksim地区にあるInterContinental、Ritz Curlton、Hiltonなどがアクセスなどの観点からオススメ。
InterContinental
【虚偽表示する店を駆逐せよ!】
Istanbulの次の訪問先はインドのMunbaiであり、当分インドの食事に悩まされると考えていたぼくたちは、栄養をつけるためにも韓国料理を食べようということに(日本料理屋は宿の近くになかった)。
ぼくたちが目指した韓国料理屋の前には、日本語で「テールスープ」、「ビビンパ」などと日本語で書かれている。
「テールスープ」がお目当てで入ったのに、メニューには載っていない。
店主に「テールスープはないか?」と訊いてみたところ「あんた、何言っちゃってんの?」って感じの顔をされる。
逆に「あんた、何デタラメを店先に表示してんの?」って言ってやりたくなるものの、言っても仕方ないのでさっさと店を出た。
さらに、ビビンパはメニューにも載っていたけれども、値段はまったく違う。
あきれたもんだ。
気を悪くしたぼくたちだけれども、妻がどうしてもテールスープが飲みたいというので、もう1軒の韓国料理屋へ。
店先の看板には「韓国料理、日本料理、中華料理」とデカデカと表示されている。
が、ここでも虚偽表示。
メニューを見たところ、日本料理はおろか中華料理もおいていない。
おいているのは韓国料理だけ。
どういうつもりで「日本料理、中国料理」と表示しているのだろうか。
客をばかにしているとしか思えない。
気分が悪かったけれども、他にアテがあるわけでもなかったのでここで食事をした。
味は、思ったとおりよくない…。
【貿易相手に隔たりある中東欧諸国だけれどもトルコは…】
ドイツへのトルコ系移民が多いことは既に書いた(「移民の多さにびっくり フランクフルト・シュツットガルト 【11/1~11/3】」参照)。
さも、トルコ経済はドイツへの依存度が高いのだろうと思って公知資料を調べてみたところ、大きくその思い込みは外れてしまった。
ドイツは最大の貿易相手国ではあるものの、中東欧諸国と比べてドイツへの依存度は大きくない。
中東欧諸国のドイツとの貿易額は軒並み30%前後を示している一方、トルコのそれはせいぜい15%程度にしかすぎない。
そういった点から見ると、トルコ経済はドイツ経済に大きく影響をうけにくいという強みが中東欧諸国と比較して存在していると理解してもよい。
貿易相手国を見ても中東の国があがってこないというのは、この国がいかに欧米指向であるかを示しているとも言えるのでは。
各国の貿易相手国データ
※データソースはCIAのThe world factbook
【展覧会の写真】
イルハンも所属していたBesiktas
トラムのベンチ
Coca Cola
Samsung dominates Istanbul as well