ヨーロッパサッカー界へ進出する新興国マネー 【Football Business2回目】

これまでヨーロッパサッカーのユニフォームスポンサーと言えば、
多くはヨーロッパ企業かせいぜい日本企業がメインだった。
けれども、2002年にプレミアリーグ(イングランド)のEvertonのユニフォームスポンサーに中国の電器メーカー科健(KEJIAN)がついたことをきっかけに、徐々に従来とは異なる新興国からの資金がヨーロッパサッカー界へ流れ込むようになった。
中国企業ではないが中国関連として挙げるならば、これまでクラブ創設以来一度もユニフォームの胸スポンサーを付けたことのないリーガエスパニョーラ(スペイン)のBarcelonaに、2005-2006シーズンが開始する前に北京オリンピックとスポンサー契約を締結するという噂があった(結局、これまでの伝統は引き継がれ2005-2006シーズンもスポンサーなし)。
なお、バルセロナの胸スポンサー契約には日本の日立製作所、そして近年航空業界で目覚しい発展を遂げているカタール航空も関心を持っていたと一部で報じられている。
現在、もっとも大きな勢いを持っているのがロシアマネー。
有名なところでは、これまたプレミアリーグのChelseaをロシアの富豪アブラモビッチ氏が買収したこと。
当時の金額で約£6,000万(120億円)であり、買収と同時にアブラモビッチ氏の潤沢な資金を大量に投入して名だたる選手をかき集めたのは有名。
2003-2004シーズンは優勝できなかったものの、2004-2005シーズンは見事にChelseaはプレミアリーグで優勝を果たした。
さらには、アブラモビッチ氏は上記のChelsea以外にもブラジルのCorinthiansや母国ロシアのCSKA Moskowといったチームを所有するなど世界のサッカー界を掌握する勢いを持っている。
アブラモビッチ氏以外にも、ロシア人がプレミアリーグのチームを買収するなど、ロシアマネーは世界でもっとも勢いを持っていることは否めない。
ロシア、そしてトップで紹介した中国以外の国では台湾も侮れない。
ベッカム、ジダン、ロナウドといった世界でもっとも有名な選手を集めたチームであるリーガエスパニョーラのReal Madridの2005-2006シーズンの胸スポンサーに、BenQ-Mobileが就くこととなった。
これまでReal Madridの胸スポンサーはドイツの携帯電話メーカーSiemens Mobileが務めていたが、同社が台湾のBenQに買収されたことに伴い、来期からは彼らの胸にはBenQ-Siemensの文字が躍ることとなる。
新興国というわけではないものの、FIFAの世界ランクは1桁代に位置しながらどうしてもサッカー後進国と思われがちはアメリカの起業家マルコム・グレーザー氏がプレミアリーグのManchester Unitedを買収した話も記憶に新しい。
さらには、保険会社AIGが来期のManchester Unitedの胸スポンサーとして契約を締結したというニュースも新しい(4年間で約110億円強)。
セリエA(イタリア)の強豪チームJuventusの来期の胸スポンサーはリビアの石油会社Tamoilのロゴが踊る。
また上で紹介したChelseaの胸には2005-2006シーズンから日本のお隣韓国のSamsung Mobileのロゴが踊っており、Chelseaの本拠地Stamford BridgeにはSamsungの大型ディスプレイが2台設置されている。
同じくChelseaには胸スポンサーではないが、Malaysia Tourism(マレーシア政府観光局)がスポンサー契約している。
このように、ヨーロッパのサッカー界を巡っては、世界各国から多額の資金が流入し、少々危険な香りがしないわけでもない
というのも、シーズン開始直前になっても、スポンサーが決まらないという話が最近はポロポロを聞かれるようになり、ヨーロッパサッカー界にも日本の社会と同じように「格差」が生じているように映るからである。
BRICsの中で、ヨーロッパサッカー界に進出していないのはI(インド)。
人口が多く、サッカー人気が高まりつつあり、何よりも経済発展が目覚しいインド。
インド企業がヨーロッパサッカーの胸スポンサーに名乗り出る日も遠くないことだろう。
次回は、日本企業がヨーロッパサッカー界にどのように関係しているのかについて触れてみようと思う。

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