タワレコはCD不況の中で生き残れるのだろうか?

今日(8/22)をもって、HMV渋谷店が閉店する。
amazonでCDが手に入るようになるまで、ぼくはHMVやそのライバルのタワーレコード(タワレコ)でCDを買う機会が多かった。
それだけに、HMV渋谷店の閉店はぼくにとって大きなイベントだ。
CDが売れなくなったという声が出て久しい。
理由は、CDに費やすお金が携帯電話に回されてしまった、そもそも楽曲に魅力がないなどさまざま挙げられる。
また、CDショップの苦境は上記の理由の他に、amazonや音楽配信の台頭なども挙げられる。
では、HMVの渋谷からの撤退(先日、銀座からも撤退していたのにはビックリ!)は上記の理由だけで片付けられるのだろうか?
もし、これらの理由で片付けられるのであれば、ライバルのタワレコも近いうちに苦境に立たされる可能性は極めて高い。
しかし、タワレコのデータを見る限りは、HMVほど苦しい状況に立っていないのではと理解できる。
まず、ぼくがたまたま2005年にHMVとタワレコの店舗数を比較したデータを紹介しよう。
関東では両者の店舗数は等しいものの、地方ではわずかずつタワレコが積極的に出店していることがわかる。
なお、HMVの合計店舗数は53であるのに対し、タワレコは77だ。
HMVとタワレコ
2010年は多くの地域でHMVとタワレコの店舗数に開きが大きくなっている。HMVが地方を中心に閉店したのに対し、タワレコは地方はほぼ横ばいながらも関東での店舗数を増大させている。
HMVが2005年に比べて6店減らしたのに対し、タワレコは7店も増やしている。
HMVとタワレコ
ただでさえ売上が減少する状況で、賃料の高い関東地域での店舗数を増やしたタワレコ。
さらに、タワレコが発表した売上高推移を見ると、かれらの売上高の下落幅は国内全体でのそれに比べて急でないことがわかる(便宜上、国内データ音楽ソフトのみを対象としDVDなど他の商品は割愛)。
CDおよびタワレコ売上推移
では、HMVが苦境に喘ぐ中でタワレコが国内全体よりはましな業績を維持している要因は何か。
4Pに当てはめて考えてみる。
価格については甲乙付けがたいが、全体的にはHMVのほうが高い印象をぼくは持っている。
ただ、価格を購入基準とするユーザーはおそらく多くがamazonもしくは音楽配信を利用していると想像でき、両者の間に価格での競争はほとんどないものとしたい。
他に、商品、プロモーションについても大きな相違はない
であれば、何が基準となるのか。
その要因に流通(出店場所)を挙げたい。
自分の経験からすると、HMVは人の集まる施設(ショッピングセンターなど)に出店していても、多くは上層階に位置しており、客足が伸びにくいという弱みをもっていたと認識している。
タワレコもショッピングセンターの上層階にあったとしても集客力の高いビルに入るなど、HMVよりも有利な立地にあることもしばしば(関東の幾つかの店舗に足を運んでの個人的な感覚でありデータに基づいていない)。

HMV タワレコ
新宿 高島屋(撤退) Flags
横浜 Vivre 岡田屋Mores
川崎 ラゾーナ Citta

タワレコはさらに、近年は小型店舗を人の往来の多い場所に出店する戦略を採用している。
例えば、八重洲というこれまで大手CDショップが目を付けてこなかった場所だ。
着メロや音楽配信に若者ほどなじみの薄くどちらかというと物理的なメディアを好むビジネスマンが多い八重洲は、タワレコにとってCDの売上増大が期待できる立地だと評価できる。
このタワレコの動きは個人的に大変興味深い。
というのも、昨今のCDをはじめとした情報はamazonのようにロングテール戦略を採用することが勝ち残るための定石と目されてきたが、小型店舗の採用はロングテール戦略と逆行しているからだ。
売れ筋路線を視野に入れたタワレコの小型店舗戦略は、CDが売れないと言われる今の時代、どのような効果を発揮して行くのか大変興味深い。
小型店舗戦力を加速するのであれば、タワレコがエキナカに進出する日も近い?
もちろん、HMVがこのまま日本でのビジネスをフェードアウトさせるのかオンラインを通じて挽回を目指すのかも見守っていきたい。

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